契約不適合責任に基づく損害賠償請求ができるケースとは
民法には契約不適合責任というものが規定されています。
これは相手方が提供した債務の内容が契約の内容に合致しないものであった場合に、追及できる責任のことを指します。
具体的な内容としては、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除が可能です。
本記事では、上記のうち特に損害賠償請求に焦点を当てて解説をしていきます。
不動産取引において損害賠償請求ができるケースとは
民法564条では、契約不適合があった場合には、損害賠償請求と契約の解除ができると規定されています。
契約不適合がある場合とは、どのような場合を指すのでしょうか。
これは追完請求について規定をしている民法562条に詳しく書かれています。
同条は相手方の提供した債務が種類、品質、数量に関して契約の内容に合致するものではない場合としています。
そして、564条では債権者は追完請求や代金減額請求をしつつ、さらに損害賠償請求をすることが可能と規定しています。
では、実際に種類、品質、数量における不適合とはどのような場合があるか、具体例を用いてご紹介していきます。
種類に関する不適合
種類に関する不適合とは、事業を始めるために不動産を購入したものの、引き渡しを受けた不動産に事業を営むために必要な設備などが備わっていなかったような場合があげられます。
例えば飲食店を経営する場合には、水道やガスなどの設備が必要となりますが、構造上経営のために必要な最低限の水道設備やガス管が通っていないというようなことが考えられます。
必要な設備が備わっていなかった場合には、設備の工事を強いられることになるため、代金の減額や損害賠償請求などによって補填することが考えられます。
品質に関する不適合
品質に関する不適合とは、引き渡された土地の土壌から汚染が発見されたり、基準値を超える有害物質が検知された場合、その他建物が地盤沈下で傾いてしまっていたり、建物の工事に欠陥があり耐震性が低いなどといったものが考えられます。
このような場合には、追完によってそれらの欠陥を修繕等により解消してもらう、代金減額を請求する、損害賠償を請求するなどさまざまな手段による責任追及が考えられます。
また種類と品質に関する不適合は、目的物そのものに発生しているものに限られません。
不動産取引においては日照や景観などの環境面に関するものや、事故物件などの心理的瑕疵と呼ばれるものに関しても契約不適合の内容となります。
このような不適合が発生している場合には、追完による補填が難しくなっているため、代金の減額や損害賠償請求、契約の解除などによって責任追及をすることが考えられます。
数量に関する不適合
動産における数量の不適合というと単純に納品数が足りないということを指しますが、不動産における数量の不適合とは、引き渡された土地の面積を測量すると、契約書の内容よりも実際の面積が小さかったといったような場合が考えられます。
ただし、このケースにおいては、面積を増やすということは物理的に不可能であるため、追完請求をするということは考えられません。
そのため、不動産売買における数量の不適合では、損害賠償請求と契約の解除をすることが一般的といえるでしょう。
特に購入した不動産で事業を営む予定であった場合には、また1から不動産を探し直す必要があり、その分事業の開始が遅れてしまうこととなるため、損害は非常に大きなものと言えるでしょう。
時効や除斥期間に注意
契約不適合責任もいつまでも追及することができるものではなく、消滅時効にかかります。
消滅時効は「債権者が権利を行使できることを知ってから5年(民法166条1項1号)」の主観的期間と「権利を行使することができる時から10年(民法166条1項2号)」の客観的期間があります。
しかしながら、目的物引き渡しから10年もの間、損害賠償請求をすることができるとなると、債務者の地位が不安定となるため、契約書に条項を設けてより短い期間に制限されていることがあります。
これはあまりに時間が経過した場合であれば、引き渡しの時にすでに発生していた不適合なのか、引き渡し後に発生して不適合なのかの判別がつかなくなることが理由の1つです。
また、民法566条では、種類・品質に不適合のある目的物を引き渡された場合には、不適合があったことを、不適合発見から1年以内に売主に通知しなければならない旨が規定されています。
これは除斥期間と呼ばれるもので、不適合を発見してから1年以内に売主に通知をしなければ損害賠償請求ができなくなるというものです。
数量に関する不適合であれば、動産の場合には大量生産されている場合が多く、追完が容易ですが、種類や品質となると追完が難しくなっているため、この除斥期間は種類と品質の不適合のみが対象です。
また、この除斥期間に関しても時効と同様に契約書の条項にて、「引き渡しから○年以内」といったような制限が設けられていることがあるため、注意が必要です。
不動産問題は新緑虎ノ門法律事務所にお任せください
契約不適合責任を追及する際には、相手方と契約の内容や解釈を巡ってトラブルに発展することが多くなっています。
そこで契約書の内容について吟味を行い、契約不適合責任が発生しているかを明白にしたい場合には、弁護士に相談することが解決への近道となっています。
新緑虎ノ門法律事務所では、不動産売買における契約不適合責任についても専門的に取り扱っておりますので、お困りの方はお気軽にご相談にお越しください。
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弁護士紹介
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- 弁護士
- 斉藤 潤(さいとう じゅん)
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- 所属
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- 東京弁護士会
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- 経歴
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事務所概要
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